「東京でカジノを開設すると総売り上げが年間で約1兆5000億円。それを見込んでここに来て米ラスヴェガス系ファンドが5000億円を投資することを約束してきた」
今月(12月)になってこんな非公開情報を耳にした私は「いよいよその時が来た」と身震いした。
「カジノ」と聞いて身近に感じる日本人は皆無だろう。
無論、新聞の上などで目にしたことはあっても、実際にカジノで豪遊したことなどないのが私たち日本人の日常なのだ。
私は「我が国におけるカジノの開設」という問題をかれこれ3年ほど前から追っている。
自分自身、カジノで儲けたいとか、あるいはカジノに投資したいといったそんなやましい気持ちからフォローしているわけでは無論ない。
偶然、とある資料を見つけてしまって以来、「あること」からどうしても頭が離れなくなってしまったのである。
「2015年、日本でカジノ産業が売上を立てている」私たちの研究所はグローバル・マクロ、すなわち国際的な資金循環の"今"と "これから"を主に公開情報(オープン・ソース)を分析しながら考え続けて来ている。
ただ漫然と「この情報は面白い」と悦に入っているわけではなく、そこで最も大切にしているのは「どのタイミングで何が起きるのか」を考え続けることである。
そして、その結果出来上がる未来に向けたロードマップのことを私たちの研究所では「予測分析シナリオ」と呼んでいる。
これを作成する際に最も参考になるのが米欧の大手企業・機関の手による文書だ。そこには「Aという出来事はXというタイミングで起きる可能性がある」等と書いてあることがある。仮にこれが我が国の大手企業・機関についてであれば、それは単なる憶測か「山カン」か、ということで済ませるべきだ。
だが米欧となると話は違う。
なぜなら米欧の諸国はインテリジェンス機関(いわゆる「スパイ機関」)を抱えており、「自らに都合の良い事実を創ってしまうこと」など朝飯前だからだ。
つまり先ほどの例でいうと「Aという出来事はXというタイミングで発生するように状況が変えられていく」というわけなのである。
この時、私は米欧を代表する監査法人の「カジノ・レポート」を読んでいた。
このレポートの「アジア」に関する章は様々なアジア諸国でのカジノに関する取り組みを紹介すると共に、どのタイミングでいくらくらいの売り上げがそれぞれの国のカジノで上がるのかを予測していた。
「シンガポール、マカオ・・・」
このレポートに書かれている、カジノで有名な地域とその将来の売上予測に目を走らせていた私は「日本(JAPAN)」と書かれたところで思わず息をのんだ。
なんと「2015年」という欄に我が国でもカジノで売上が立っていることが明確に書かれていたのだ。
確かに我が国では前々から「今こそカジノを誘致せよ」という声はある。
だが、そうした声が上がる度に戦後日本の「国民的遊戯」としての名を恣にしてきたパチンコ業界がこれを掻き消してきた経緯がある。
パチンコ業界からしてみれば、カジノが出来て、そこに上客が取られてしまってはたまったものではない。
だが世界的な監査法人の手によるこの「カジノ・レポート」では、2014年までの間は「N/A」。
すなわち「数値不明」としているのに、2015年からは「日本でもカジノ産業が売上を立てている」と明記している。
しかし、そこでは一覧表の上で明記はされていても、本文中には一切、詳しい説明が書かれていない。
「一体、何がきっかけとなって我が国にカジノが設置されることになるのか」---この余りにも不思議な記述を読んで以来、私の頭はこのことから離れなくなってしまったのだ。
「なし崩し的なデフォルト処理」を行うことになるそして今年(2013年)12月6日。
「国際観光産業振興議員連盟(通称「カジノ」議連)はカジノ解禁を含めた特定複合観光施設を整備するための法案を国会に提出した。
共同提案者としては自民党の他、日本維新の会と生活の党の議員などが名を連ねた。
来年(2014年)1月に召集される次期通常国会での成立を目指すのだという。
いよいよ「カジノ実現」に向けて、立法レベルでの動きが本格化したというわけなのである。
我が国でこのような動きがいよいよ大きくなり始めたことの背景には、我が国におけるデフォルト(国家債務不履行)リスクが極大化し始めているという重大な問題がある。
我が国の公的債務残高は2015年度末には対GDP比で実に270パーセント以上にも上る見込みだ。このまま座して何もしないと我が国は借金の山に埋もれてしまう。
もっともこう言うと必ずこんな反論をする論客たちがいる。
「我が国がデフォルトする? そんなことはあり得ない。財務省が増税をするために世論を誘導しているに過ぎない、架空のストーリーだ」
こうした反論は全くもってグローバル・マネーの実態を知らない、お気楽な議論だ。
このことについては、6日に上梓した小著最新刊『ジャパン・ラッシュ---「デフレ縮小化」で日本が世界の中心となる』(東洋経済新報社)において詳しく書いた。
放っておくと米欧のヘッジファンドや投資銀行たち、すなわち「越境する投資主体」たちはそうした苦境に陥った我が国の国債をある時から一斉に空売り(ショート)し始める危険性がある。
この点についても「これまで何度も試みられたが失敗に終わった。だから今後も無理だ」と述べる者たちが後を絶たないが「過去は過去、今は今、そして未来は未来」なのがマーケットの現実だ。
米欧の想うがままに我が国が破産させられてしまうことは何としても避けなくてはならない。
だからこそ我が国はギリギリのところまで努力をし、それでも無理だということが分かった瞬間に、いわば「なし崩し的なデフォルト処理」を自らの手で行うことになるのだ。
「自分で自分の首を締めることになるデフォルトなどあり得ない」そう断言する論客が今後いたとするならば、そこに耳を傾けるべきではないだろう。
なぜなら我が国はこれまで明治維新以来、何度も「自分で自分を破綻(あるいは破綻ギリギリ)まで追い込み、次のフェーズへと歩みを進めてきた」からである。
後がない日本の「財政調整」のためのカジノ設置無論、我が国がそのように政府をあげて公然と「借金踏み倒し」を行うのを諸外国がそのまま見過ごすはずもない。
したがって我が国は「デフォルト宣言を行う際に必ず国家がしなければならないこと」を順を追って済まさなければならないのである。
このことはグローバル・マーケットでは「常識」だが、どういうわけか我が国における議論では全く触れられることがない。
それは具体的にいうと2つの措置である。
一つは「財政調整(fiscal adjustment)」であり、要するに「無駄な支出は削り、同時に無駄な資産は全部放出する」ということを指している。
もう一つは「債務交換(debt swap)」であり、「債権者に対して債務者が債務の減免や期限延長を求めること」を指している。
このことは、来年1月に行う恒例の「年頭記念講演会」においても改めてじっくりと説明したいと思う。
そしてここでいう「カジノ」とは、要するに前者に該当する。
確かにこれまでは業界の利益がぶつかり合い、カジノは我が国において御法度とされてきた。
だがもはや「後がない状況」である以上、「やれることは全部やれ」ということになってくる。
いわゆる「アベノミクス」の混乱ぶりを見ているとそのことが如実に分かる。
だからこそ「カジノを設置すべし」ということになってくるわけだ。
表向きは「2020年の夏季五輪の東京招致が決まったから」などと言われている。
だが、「3年前」に世界的な監査法人が書いたレポートの中で「日本におけるカジノ設置は2015年」とあらかじめ明記されているのである。
グローバル・プレイヤーにとって「ジャパン・カジノ」の繁栄は規定事項我が国が、団塊の世代(1948~50年生まれの世代)が基礎年金を受給し始める2012年から15年までの間、国家財政上、最初の危機を迎えることは人口ピラミッドから明らかであった。
そしてもはや出口がそれ以外無いことが明らかである以上、我が国が御法度であった「カジノ」に手を出すことは非を見るより明らかだったというわけなのだ。
そうである以上、グローバルなプレイヤーたちはそうした我が国で浮かび上がる「巨大なカジノ・マーケット」をどのようにしてものにするかで凌ぎを削り始めていたのである。
そして冒頭述べたとおり、早くも5000億円もの大金を投げ込むと言いだした巨大ファンドまで現れたというわけなのである。
「カジノを開いたものの、どうもうまく行かない。日本から知恵が欲しい」
さらに驚きなことに、あの北朝鮮の金正男がこんなことを日本側の関係者に対して間接的に伝達し、教えを乞い始めているとの非公開情報もある。
我が国にカジノは未だ存在していない。
だが、北朝鮮から見れば我が国のような金融大国に「カジノ」が正々堂々と成立すれば、世界中からマネーが集まるのは非を見るより明らかなのだ。
だからそうなる前に関係性をつくっておき、いざという時にはおこぼれに預かろうという、北朝鮮らしい狡猾な姿勢がそこに見え隠れしている。
私たち日本人には決して見えない「カジノ」の世界。
しかしグローバル・プレイヤーにとって「ジャパン・カジノ」の繁栄は規定事項なのだ。
この認識のズレが果たして、これからどのように埋められていくことになるのか。
これこそが今、最も注目すべきポイントなのだ。
現代ビジネス
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