2014年6月の国会での成立が予想される「カジノ法案」。
お台場や大阪にラスベガスが出現したら、いったいニッポンはどうなる!?
世の中、「今年こそ、カジノ法案成立か?」と喧しい。
実際のところ、「カジノ法案」は昨年9月の本国会に提出されるはずだったのだが、そこは、多くの人間がパチンコ業界に天下りしている警察官僚の激しい抵抗に遭って、流れてしまったという。
だが、国会の「カジノ議連」は、与野党150人以上の議員を擁する「議連」の中の最大勢力。
顧問には安倍晋三、小沢一郎、石原慎太郎と、各党の党首が名を連ねており、この「議連」が本気になれば、カジノ法案が通らないはずはないらしい。
だから、今年6月までの通常国会では十中八九成立するに違いない、というのだ。
「カジノ法」成立のあかつきには、競争原理を働かせるため、カジノ運営のライセンス(言い換えれば「胴元の権利」)が2〜3社に同時に与えられ、とりあえず2都市にカジノができるだろうと観測されている。
そのために、フジテレビは台場、吉本興業は沖縄、HISは長崎ハウステンボス、セガサミーは宮崎シーガイアにカジノを作るべく、水面下で準備を始めている、とも聞く。
では、もしも日本にカジノが誕生したら、日本人はカジノとどう向き合えばよいのか?
ここに恰好の参考書がある。
会社から着服した106億8000万円をマカオのカジノでスッて現在服役中の大王製紙元会長・井川意高が書いた『熔ける』(双葉社刊)である。
この本には、カジノに関する興味深い話がたくさん書かれている。
たとえば、マカオには、カジノと契約を結んだ「ジャンケット」と呼ばれる仲介業者がいて(ラスベガスやシンガポールにはない、マカオだけの存在らしい)、彼らは世界中の富豪と独自のコネクションを結び、航空機のチケットやらホテルのスイートやらを手配し、富豪をカジノのVIPルームに呼び込むのだそうだ。
客がマカオに滞在している間は、コンシェルジュとして身の回りの世話をし、ギャンブルには興味がないという同伴者がいれば観光や買い物につき合い、客のタネ銭が尽きたという時には借金の手配までして、最終的にはその富豪がカジノに落とした金の何%かをバックして貰うのだと言う。
客の側にしたら、自分がギャンブルをしている間、すぐ横に、愛想はいいが心の底では「負けろ〜負けろ〜」と祈ってるヤツがいるわけで、自分なら、耐えられないスけどね。
ところで、ラスベガスのカジノからマフィアが完全に追放されたのは、1983年のこと。
それ以後、カジノはマフィアの副業から、巨大資本によるビッグ・ビジネスの時代に突入し、買収と統合を繰り返し、現在、ラスベガスのカジノ免許は、ほぼ4社に集約されていると聞く。
その4社とは、
(1)MGMグランド、ベラージオ、ミラージュ等、11の巨大ホテルを所有する、カーク・カーコリアン率いるMGMリゾート。
(2)ベネチアンを経営する、シェルドン・アデルソン率いるラスベガス・サンズ・グループ。
(3)ウィンを経営する、スティーブ・ウィン率いるウィン・リゾーツ。
(4)シーザーズパレス、フラミンゴ、ハラーズ、バリーズ、リオ等を経営する、ゲイリー・ラブマン率いるシーザーズ・エンタテインメント。
一方、世界のカジノのもうひとつの中心地、マカオでカジノ免許を持っているのは、マカオのカジノ産業の産みの親、スタンレー・ホー率いるSJM、オーストラリアの大富豪ジェームズ・パッカー率いるクラウン、香港の不動産王・呂志和率いるギャラクシー。
この3社に、ラスベガスから進出してきた、MGMリゾート、ラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツの3社を加えた、6社。
つまり、世界の巨大カジノ運営会社は、マカオに進出していないシーザーズ・エンタテインメントも含めて、全部で7社に集約されるのである。
カジノ法案が成立して、仮にフジテレビや吉本が台場や沖縄にカジノを作ったとしても、彼らがカジノの運営までできるわけではない。
カジノ運営には、チップの偽造、すり替え、マーキング、カウンティング、ディーラーとの内通等々、あらゆる手口のイカサマに対抗できるノウハウが必要で(でないと、確実に何億ドルも食い物にされるそうだ)、結局、カジノ免許を与えられ、カジノの胴元になれるのは、前述の7つの運営会社のうちのどこか、ということになる。
で、ここからが重要なことだが、アメリカの経済誌「フォーブス」がかつて発表した世界長者番付によれば、ラスベガス・サンズの経営者のシェルドン・アデルソンは世界第6位、MGMリゾートのカーク・カーコリアンは世界40位、マカオのSJMのスタンレー・ホーは世界59位、さらに、クラウンのジェームズ・パッカーはオーストラリア第2位、ギャラクシーの呂志和は香港第5位の富豪なのだそうだ。
早い話、カジノの胴元は、ムチャムチャ儲かる商売なのである(このことに早く気づくべきでしたね、井川サン)。
ついでに言うと、シェルドン・アデルソンは1933年生まれの80歳。
スタンレー・ホーは1921年生まれの92歳、カーク・カーコリアンに至っては、1917年生まれの96歳。
いずれもピンシャンしているそうだ。
どうやら、カジノ運営は健康にもいいようである。
ソース:http://gqjapan.jp/column/column
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