経済効果1兆円?宮崎市の「フェニックス・シーガイア・リゾート」にカジノを誘致する動きが加速している。
安倍晋三首相が最高顧問を務める超党派議連「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)が、今国会にカジノ合法化法案を提出する。
この動きに乗り遅れまいと宮崎の経済界は11月、誘致に向けた研究会を発足する。
誘致に成功すれば経済効果は1兆円といわれ、宮崎経済復活の起爆剤として期待が高まる。
「宮崎は新幹線もない、在来線も単線、東九州道もつながらない。何かに挑戦しなければ沈むだけ。それがカジノなんです」
研究会設立を呼びかけた宮崎県商工会議所連合会の倉掛正志専務理事は、こう語った。
倉掛氏は研究会発足に向けて7月以降、準備を進めてきた。
これまで2回開催した準備会合には宮崎経済同友会や県内の商工会議所など12団体と、オブザーバーとして県と宮崎市、シーガイアを平成24年に買収したパチスロ・ゲーム機器最大手、セガサミーホールディングスも参加した。おおむね誘致賛同で一致し、11月中旬に研究会を発足する。
経済界がカジノ誘致に熱を上げる背景には、宮崎経済の苦境がある。
宮崎では「トリプルパンチ」という言葉が流布している。
平成22年、家畜の伝染病、口蹄疫が発生した。
牛や豚28万頭が殺処分され、主要産業の畜産は大打撃を受けた。
経済損失は3千億円以上といわれる。
翌23年1月に、やはり伝染病の鳥インフルエンザウイルスが発生した。追い打ちをかけるように新燃岳が噴火した。
このトリプルパンチによって、観光客の足も宮崎から遠のいた。
宮崎への観光客数は平成11年の1271万人をピークに減少傾向が続いていた。
そこに口蹄疫の影響もあり、22年は1103万人まで落ち込んだ。
24年は1389万人と増加したようだが、統計の算出方法が変わり、ビジネス目的の宿泊者数を加えている。「実体をみると、観光客減少に歯止めはかかっていない」(県観光推進課)という。
苦境を打破する切り札として浮上したのがカジノ。
海外をみると、アジアで市場拡大が目立つ。
カジノといえば米ラスベガスが頭に浮かぶが、現在の世界トップは旧ポルトガル領で中国の特別行政区マカオだ。
英大手会計事務所PwCの調査によると、2010年のマカオのカジノ収入は234億ドル(2・3兆円)だった。
ラスベガスは104億ドル(1兆円)。
アジアではシンガポールが2010年にカジノに参入し、初年に28億ドル(2700億円)の収入をはじき出した。
数字を見る限り、経済の起爆剤としての爆発力は十分だ。
経済界の後押しに、行政も動き始めた。河野俊嗣知事は9月3日の記者会見で「経済効果や海外からの誘客も含めて大変関心を持っており、動向を注視している」と語った。
河野氏は9月定例議会で議員から誘致の本気度を繰り返し問われ、17日の答弁で「前向きに取り組んでいる」と踏み込んだ。
だが、カジノ合法化に、期待をかける地域は多い。
現在、24都道府県がカジノを含む統合型リゾート施設誘致に動いている。
九州ではハウステンボス(長崎県佐世保市)が先行する。
子会社の国際旅客船を使い、平成24年に日本の法律が及ばない公海上でカジノ営業を実施した。
対するシーガイアの強みは、宮崎空港から近く、700ヘクタールの広大な敷地にホテルや5千人収容の国内最大規模の会議場、ゴルフコースを備えることだ。
宮崎観光の象徴として誕生しながら、何度も経営難に陥ったシーガイア。
カジノ誘致により、宮崎経済とともに不死鳥のように復活を期している。
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