アジア・太平洋地域の各国で、カジノリゾートの開発に向けた動きが本格化している。
世界最大規模のマカオのカジノビジネスが中国当局の規制強化で暗礁に乗り上げる中、投資家や開発業者らはオーストラリア、フィリピン、日本などでの新規リゾート建設を画策。
中国本土からの旅行客をいかに多く呼び込めるかを念頭に置き、事業の足がかりをつかみたい考えだ。
◆マカオに匹敵
かつて多くのヒッピーたちが訪れた豪州北東部の都市、ケアンズ。
今でもバックパッカーやダイバーに人気の場所だが、香港で不動産開発を手掛けるトニー・ファン氏によれば、同市は2019年までにマカオに匹敵するカジノの中心地になるという。
ファン氏はケアンズの北にあるかつてのサトウキビ農場を81億5000万豪ドル(約7813億円)規模のカジノリゾートに生まれ変わらせようとしている。
計画に対する暫定的な認可はすでに当局から取得済みだ。
18年後半までに第1期の完成へとこぎつけることが目標で、最終的には人工ラグーンを取り囲む7500室のホテルを建設する予定。
18コースのゴルフ場や親水公園も併設するという。
実現すればこの地域のホテル収容能力はこれまでの3倍近くとなり、シンガポールにあるカジノリゾート2つを合わせたよりも大きくなる。
ファン氏の息子でグレート・バリア・リーフ社の開発会社、アクイス・リゾートの最高経営責任者(CEO)を務めるジャスティン氏は、先ごろ電話取材に応え「ケアンズが世界的な観光地になれると強く確信している。
ここは西側の都市としては地理的に中国に最も近い」と、カジノリゾート成功の鍵となる中国人旅行者の取り込みに自信をのぞかせた。
とはいえファン氏の事業は、アジアを舞台にした激しい競争にさらされている。
規制の厳しいマカオからの撤退を余儀なくされた投資家らがスリランカ、韓国、フィリピン、日本といった国々での新たなカジノリゾート建設をもくろんでいるからだ。
450億ドル(約4兆5927億円)規模のマカオのカジノ市場で、当局から運営許可を与えられている企業は現時点で6社にとどまる。
中国人の海外旅行支出総額は13年に前年比26%増の1290億米ドルに達した。
同国はすでに海外旅行支出で世界の首位に立つ。
中国人旅行者による13年の豪州での支出は48億豪ドルだったが、これは上記の支出総額の4%に満たない水準だ。
豪州のカジノ業界にとって、アジア各地のカジノリゾートやオンラインカジノとの競争を勝ち抜くのは至難の業といえる。
調査会社、IBISワールドは昨年11月の報告書で、豪州のカジノ収益伸び率は、19年までの5年間で1年当たり2.9%と試算。
過去5年間の同3.6%から低下するとの厳しい観測だ。
◆新たな基幹産業に
豪州国内のギャンブル産業でも、カジノ市場はパブでのスロットマシンやスポーツ賭博、宝くじなどに押され気味。
10年の政府の報告によると、同年にカジノが計上した収入は35億豪ドルで、ギャンブル部門全体の18%にとどまった。
それでも資源採掘に代わる新たな基幹産業として、カジノにかかる期待は大きい。
ケアンズのあるクイーンズランド州の政府は、アジアからの観光客向けのカジノリゾート開発について新たに3件を承認する計画だ。
石炭価格の低下に伴い、州政府が収入として計上する鉱区使用料は17年6月までに少なくとも3億2400万豪ドル減少するとみられている。
【SankeiBiz】
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