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日本版カジノ法案とは~「IR推進法」入門(後篇)

シンガポールの成功に学ぶカジノ規制IR推進法案に書かれた実施法の大枠
前回、特定複合観光施設区域(IR=統合型リゾート)法案は推進法と実施法との二段階方式であり、今国会に提出されているのはIR推進法律案であることを説明した。
推進法案は簡単に言うと、IR実現へ向けた政治の意思を国民に示し、1年かけて実施法を作ろうという内容だ。
とはいえ、推進法案が国会で審議される中では、実は実施法案をどんな内容にするつもりかが問題であり、そのため実施法の大枠の考え方は推進法案にも表明されている。

IR推進法案は、「第1章 総則」(第1~5条)、「第2章 基本となる事項」(第6~13条)、「第3章 IR整備推進本部」(第14条~23条)、の3章で構成されている。
第2章がIRの中身についての条文であり、条文のタイトルをざっと列記すると以下のようになる。
国際競争力の高い魅力ある観光地の形成等、観光産業等の国際競争力の強化及び地域経済の振興、地方公共団体の構想の尊重、カジノ施設関係者に対する規制、カジノ施設の設置及び運営に関する規制、カジノ管理委員会の基本的な性格及び任務、納付金、入場料。

このように、1年以内に作る実施法で細かい点をつめる事項はすべて書かれている。
ポイントは3つ。
1つは、カジノを含めたIR施設の主な目的が、外国からの観光客呼び込みであり、雇用など地域経済活性化にあること。
2つめは、「カジノ管理委員会」という規制機関を設けて、カジノ運営をする民間事業者が犯罪に関与せず、公正な運営をするように見張らせることだ。
青少年保護やカジノによる悪影響(賭博中毒など)のための規制も同委員会が担当する。
3つめには、納付金と入場料といった、IR施設から国や地方公共団体がどういう形で直接の収入を得るかという点だ。
これも実施法に盛り込むことになる。

また、IR推進法案の第3章では、IR推進本部を内閣に置き、本部長を総理大臣が務めることや、学識経験者20人以内からなるIR推進会議を置くことなどを規定している。
つまり、総理大臣をトップとして関係官庁全部に指令する体制で実施法作りをすること、それに、世論を反映させるための有識者会議を設けると言っている。

お手本となるシンガポールのIR
IR推進法案を提出した超党派のIR議連は、多くの国で営業しているカジノやIRの建設・運営体制や法規制について調査してきた。
中でも注目されているのがシンガポールの事例だ。
シンガポールは、日本と同じ天然資源があまりない国として、かつては日本の高度経済成長を政策モデルとしていた。
近年では、同国は、香港と並ぶアジアを代表するヘッジファンド集積地であるなど金融立国として日本に先行し、IRによる国際観光立国の面でも日本のほうからお手本とする国となっている。
シンガポール政府は観光客誘致の大型プロジェクトとして2004年にIR施設の建設を決定した。
同時に2つ(ビジネス・コンベンション・ツアー客向けと家族リゾート客向け)のIR施設を作るという計画は、政府から諸条件を示したうえで入札により施設の所有・運営者を決める方式で進められ、それぞれ50億~60億米ドル規模の巨大施設の建設を、税金を投入せずに実現した。
比較的ビジネス客向けの「マリーナ・ベイ・サンズ」は米ラスベガス・サンズが、家族客向けの「リゾーツ・ワールド・セントーサ」はマレーシアのゲンティング・グループが、それぞれ建設し、所有・運営している。ともに2010年から開業。
マリーナ・ベイは、その象徴的建物である屋上プール付きデッキ(3つの高層ホテルの上にある)をSMAPのメンバーが歩いた映像が携帯電話のCMで使われ、日本でも知名度を上げた。
また、セントーサには、海底水族館などマリーン系の施設のほか、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールがある。

両施設とも開業開始以来、順調に客足をつかみ、シンガポールの国際観光立国政策に貢献している。
シンガポール政府観光局の統計によると、同国への観光客数は、2009年の968万人から2012年には1450万人へと増加した。
観光収入も、09年に126億Sドルだったのが、12年には231億Sドルまで増えた。
(現在、1Sドル=約82円)
こうした観光客誘致のほか、IR施設域内での雇用、納税の増加など、IRプロジェクトには大きな経済効果が見込めることが、日本でも超党派のIR議連の活動を後押ししている。

規制のあり方もモデルに
IR法制定へ動き出した日本にとっては、シンガポールのIRプロジェクトにはもう1つモデルとなる点がある。同国政府は2006年にカジノ管理法(Casino Control Act)を制定、内務省傘下のカジノ規制機構(CRA=Casino Regulatory Authority)が細かい規則の制定やライセンス更新の判定、違法行為の摘発などに当たる仕組みとした。CRAのサイトを見れば、マリーナ・ベイやセントーサに対し、カジノ管理法違反について指導し、罰金を科している内容が公表されている。
さらに、シンガポール政府は、賭博依存症対策として、地域開発青年スポーツ省の下に官民の専門家(心理学者・精神科医・カウンセラー・法律家など)で構成する評議会(National Council on Problem Gambling)を設けて、公衆教育プログラムを実施している。

IRと呼んでいても客寄せの中核はカジノであり、IRプロジェクトを推進するためには、カジノの専門規制機関や賭博依存症対策などを政府が提供することが欠かせない。

カジノ規制については、一時期、マフィア資金でカジノが建設・運営され、現地での犯罪増加、悪評、客離れを経験してきた米ネバダ州がカジノビジネスと犯罪を切り離すために厳格な規制を作ってきており、それがラスベガス・モデルとしてカジノやIRを新設する国・地域で参考にされている。
その事業者ライセンスの調査では、経営陣全員が親族に及ぶまで犯罪歴・納税歴がクリーンであるかを徹底的に調べられる。
従業員の採用や取引先なども後々まで規制機関に監視されることを考えると、カジノビジネスへの参入は簡単にはできない。
ラスベガス・サンズなど米国のカジノ運営会社はすでに上場会社となっており、積極的に情報を公開する姿勢を示している。

実現のカギとなる「カジノ管理委員会」
日本のIR議連は、シンガポールのほか、欧米や豪州の事例も研究し、IR実施法案の基礎となるように、規制機関のあり方についての基本的な考え方もIR推進法案に書き込んだ。

シンガポールの実例と比べながら見てみよう。
同国のカジノ管理法におよそ該当するのが「IR実施法」であり、規制機関のCRAに当たるのが「カジノ管理委員会」だ。

IR推進法案では、賭博依存症対策の組織については言及していないものの、「第10条 政府は、カジノ施設の設置及び運営に関し、カジノ施設における不正行為の防止並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行う観点から、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。」として、犯罪防止の措置などとともに、「青少年の保護のために必要な知識の普及その他の青少年の健全育成のために必要な措置」や「カジノ施設入場者がカジノ施設を利用したことに伴い悪影響を受けることを防止するために必要な措置」を挙げている。
こうした措置をシンガポール型の専門評議会に担当させることもできる形になっている。

シンガポールモデルとの大きな違いは規制機関「カジノ管理委員会」の組織のことだ。
これに関しては、内務省傘下すなわち警察の一部であるシンガポールCRAよりも、日本のほうが独立性の強い組織とすることを想定されている。

IR推進法案では、「第11条 カジノ管理委員会は、別に法律で定めるところにより、内閣府の外局として置かれるものとし、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図るため、カジノ施設関係者に対する規制を行うものとする。」と書かれている。
これだけでははっきりしないが、IR議連の「基本的な考え方」では、カジノ管理委員会について「立法府・行政府より独立した3条委員会とし、準立法件を付与せしめる。」となっており、強力な組織が想定されている。
3条委員会とは、厳密には国家行政組織法3条に基づく組織(中央労働委員会など)を指すが、広い意味では内閣府設置法に基づく同種の組織も3条委員会と呼ばれる。
この場合は、推進法案で「内閣府の外局」としている通り、内閣府設置法に基づいて置かれている公正取引委員会や国家公安委員会と同様の組織が意識されている。

この点は、日本版IR実現へのカギになる論点だ。
前稿で書いておいたが、日本人に広くあるギャンブルについての悪いイメージの源泉の1つは、規制の不透明感にあるからだ。
規制に対する不信の代表例がパチンコ産業だ。
パチンコ店は実質上、すでにカジノ営業と同じ性質を持っている。
確かにパチンコ店の中ではゲームに勝ったところで少額の景品しかもらえない。
しかし店の近所に景品交換所があり現金に交換してもらえる、と常連客は誰でも知っている。
それなのに、法律では賭博ではないことになっている。
さらには、パチンコ用カードや機器メーカーとその業界団体への警察官僚の天下りがしばしば指摘され、不信感を増しているのが現状だ。
ここで、カジノを含むIR施設の規制機関を、シンガポールのような、警察の一部にして法案を提案するようなことをすれば、反対派を増やす可能性は大だ。

それに対して、いわゆる3条委員会としてのカジノ管理委員会が新設されることになれば、将来的にはパチンコ産業や公営ギャンブルの関連法制を変更し、同委員会に規制を一元化する道も開ける。
今の段階では仮定に仮定を重ねる話にはなるが、カジノ管理委員会が透明・公正なギャンブル産業の監督活動をしていくことは、カジノばかりでなくギャンブル全体の悪いイメージ払拭に大いに役立つだろう。

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