最近、「カジノ解禁へ向けた動きが本格化」なんてニュースをよく耳にする。
昨年秋の東京五輪決定によって、「観光立国」なんてテーマがブレイクし、IR(カジノを含む統合型リゾート施設)の話題が急増したことに加え、やはり大きいのは今国会で「IR推進法」が審議予定になっているからだろう。
そんな調子で巷(ちまた)にあふれるカジノ関連の報道を注意深く見てみると、「カジノの専門家」やら、「カジノ議連関係者」の方たちがこんなことをおっしゃっているはずだ。
「日本国内でカジノができるのは2カ所。東京のお台場、沖縄が有力だ」
確かに、取材をしていても同様の話は聞こえてくる。
もちろん“憶測”の域を出るものではないが、それなりの根拠もある。
日本のカジノはシンガポールがモデルになる、というのが大方の見方だ。
インバウンドや観光収益が増加という分かりやすい成功をおさめているため話が通しやすいことに加え、ゼロから法整備や規制局を設けて導入したプロセスも参考になるからだ。
そのシンガポールがつくったIRリゾートが、都市のど真ん中にある「マリーナベイ・サンズ」とセントーサ島というリゾートにある「ワールド・セントーサ」。
導入スタイルもマネるとすれば、日本も「都市型」と「リゾート型」の2つになるはずだ、というわけだ。
国際空港へのアクセスが便利で、観光都市となれば必然的に東京か大阪に絞られる。
その中でも、「お台場」が「都市型カジノ」の最有力と目される理由は、首相とフジテレビが・・・いや、親密な関係にあるからと言われている。
先日も『笑っていいとも!』に出演して話題になったが、この春には甥っ子までフジのお世話になる。
「お台場カジノ」の旗ふり役である日枝会長とは夏休みを一緒にゴルフをする仲ということもあり、「内定」が出ているのではなんて囁かれているのだ。
「お台場カジノ」と「沖縄カジノ」一方、「リゾート型」で沖縄の名が挙がるのはさまざまな理由がある。
まずよく言われるのは、実現へ向けたハードルの低さだ。
2007年に仲井真知事が、国会でカジノ法案を通すよりも、「沖縄振興特別措置法」を改正してカジノ導入を盛り込んでしまったほうがてっとり早いじゃん、みたいな発言をして物議を醸したが、今でも同様の考え持つ地元政治家は多い。
この背景には、観光ビジネスの低迷がある。
リゾートアイランドといいながらも、やってくるのは日本人ばかりで1人当たりの観光消費も少ない。
全国でもずば抜けて高い失業率に悩む沖縄の観光業者からすれば、外国人を呼び込めるIRは“起死回生”のチャンスなのだ。
そこに加えて最近では、「普天間基地移設問題」も関係してくる。
県内であれ県外であれ、基地を動かせば地域経済は確実にダメージを受ける。
それを軽減するにはIRをつくるしかないでしょ、なんて意見が県内、特にキャンプキンザー移設跡地(浦添市)で盛んに持ちあがっているのだ。
このような調子で、まことしやかに囁かれる「お台場カジノ」と「沖縄カジノ」だが、個人的には巷で言われているほど本命ではないと思っている。
まず、「お台場」に関しては、HISの澤田会長らが主張するように、首都・東京にいきなりカジノリゾートという日本人が運営したことのないリスキーな施設をドカンとつくってしまっていいものかという問題がでかい。
「東京五輪開催に合わせてカジノでおもてなし」なんて気の早い人たちはソロバンを弾くが、これからの集団的自衛権の議論次第では、東京五輪だってテロのターゲットになる可能性は大いにある。
そんな状況下で、マフィアやらマネロンやらの恐れがあるカジノをつくったら収拾がつかない、なんて反対意見は当然出るだろう。

沖縄も然りだ。
かの地では、1990年代後半からカジノ誘致を進めてきたという実績がある半面、「カジノ反対運動」の蓄積があり、筋金入りの闘士も多い。
その代表が、糸数慶子参議院議員だ。
「カジノ誘致に反対する女性の会」なんてのをつくったりして、もうかれこれ10年以上、反対キャンペーンを続けていらっしゃる。
基地問題でも分かるように、沖縄における「反対運動」は日本全国から左巻きの人たちが住民票ごと集結してくることで知られている。
「基地を押し付けた後は、ギャンブルを押し付けるのか」なんてワーワーとシュプレヒコールがわきあがることは十分に予想できる。
というよりも、その兆候はすでにマスコミにはあらわれてきている。
スピン(情報操作)に惑わされてはいけない分かりやすいのが、先日放送された『報道特集』(TBS)だ。
仙台へカジノ誘致をしたいという人たちを紹介しているかと思いきや、途中からどういうわけか、衰退傾向にあるパチンコが宮城県ではなぜか大人気ですとグラフを出して、日本は世界でもギャンブル依存症が多い、と訴え始める。
さらに、仮設住宅での暮らしを余儀なくされている方や、仙台市内のサラリーマンたちへマイクを向け、「カジノができたら行ってみたい」なんて言わせていた。
外国人観光客をターゲットとした「統合型リゾートの誘致」を、「近所に大型パチンコ店ができますよ」みたいなレベルの議論へすり替える。
テレビや新聞はオトナの事情から、おおっぴらにパチンコや競馬の批判ができない。
が、「カジノ」ならば気兼ねなくギャンブル依存症だなんだと叩ける。
つまり、マスコミはカジノ反対派のネガキャンにのせられやすいのだ。
海外のIRオペレーターをはじめ、カジノ推進派はそれをよく分かっている。
だからこそ先手を打って、「お台場と沖縄にカジノができる」なんて情報を流し、既成事実にしてしまおうと動いているわけだ。
カジノ推進法が成立したら、闘いはさらに激しくなる。
恐らくかなり盛った話も出るだろう。
スピン(情報操作)に惑わされることなく、建設的な議論を進めたい。
Business Media 誠から
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